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医院の本棚より:『スーパー名医』が医療を壊す

【カテゴリ】 医院の本棚より 2010年04月06日

 村田幸生著、祥伝社新書、760円+税。
 タイトルにびっくりしますが、その意味するところは、『スーパー名医』への幻想や、『スーパー名医』フィクションを本気にして、現実を見ようとしない風潮が、医療崩壊の一因となっている、という現場からの指摘です。
 当院でも『ゴッドハンド輝』のコミックス全巻を待合室に置いていますが、あれはドラマとして感動するし、面白いです。少年に夢を与えるという、少年漫画の王道。医学的にも緻密に取材してあります。ただ一点、現実離れしているのは、主人公が関わった患者さんが一人も死なないこと。これだけは、現実ありえません。
 村田先生が上げる、名医ドラマのベタ設定が笑えました。このようなドラマや漫画では、主人公はイケメンで髪ふさふさの、若く正義感あふれる天才外科医。一匹狼が多く、24時間寝ないでも平気、風邪もひかない、成功率0.1%!?の手術を請け負い、終わった瞬間に『手術は成功です』と説明する...ちょっとおっ!麻酔科の先生や若いドクターがこれから必死に術後管理するんでしょうがっと思わず突っ込みたくなります。
 現在の医療は非常に高度で複雑化していますから、天才ひとりでは何もできません。チーム医療が主体です。でもそれじゃ視聴率あがんないんだろうなー。
 そういう名医幻想に洗脳されてしまうと、現実の人の死が受け入れがたいらしい。それが、現実の医療従事者と患者さんの食い違いに発展してしまっては、お互い悲劇です。
 医学部に入ると、真っ先に直面するのが、人は必ず死ぬという事実です。何しろ、解剖学の講義で、ご遺体と何ヶ月も対峙するわけです。生きていることがいかにはかなく、かつ奇跡に近いほど尊いか、という事実が文字通り骨身にしみます。人類史上、いまだかつて、死ななかった人間は一人もいないし、現在生きている我々でも、永遠の命を保証されている人間はゼロ。死は、その時期と形がどうであれ、必ず全ての人に訪れる運命です。
 なぜか、便利で快適になった現代社会はその事実から目をそむけようとする。ひとりひとが生死観を見つめないと、この崩壊は止まらないと、村田先生は現場から苦渋の問題提起をされています。
 日本でも、アメリカの医学ドラマ『ER』みたいなオトナノ番組ができないでしょうかね。
 

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